この雪の下で春を待つ

暖炉の上に置いた煙草の箱から新しいのを1本取って、くわえる。火をつけて深く吸い込んだ。

一気に半分近く燃えて灰になった煙草は重みに耐えかねて床に落ちる。煙を吐き出して、窓から未だに振り続ける雪を見上げ、ダイは目を細めた。

「悪魔のご光臨か」

 診療所の棚の中、チフスに対抗する薬は跡形もなく消えているのを街の住人達は知らなかった…。
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