この雪の下で春を待つ

「リーク、あ…」

「だめだよ。あいつに触ったら俺たちまで餌食だ」

「でも…」

「春を探しに行くんだろ?こんなところで死ぬなんてまっぴらだ」

リークは外に出て少年を見に行こうとするフーの手を掴んで、強制的に地下の部屋まで連れていく。

地下の部屋に入ると、何事もなかったかのように蓄えた食料の傷みかけているものを取りだして、フーに手渡す。

自分の分も取り出して、まだ外を見ているフーを抱きしめた。

「フー、だめだ。俺たちにはどうにも出来ない」

「でも」

「伝染病なんだ。薬があれば治る。でも、エリア00に孤児の分まで薬なんてないんだよ。だから、チフスに罹った孤児は死ぬしかないんだ」
< 93 / 203 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop