この雪の下で春を待つ
「50人…か」
「まだ死んでねぇ孤児もいるんだ。そいつらの中にもチフスに罹っている奴もいる。これからどんどん増えるだろうぜ」
村の男たちが視線を投げる先にあるのは大きな穴。その穴には死んだ孤児たちの山が出来上がっている。
チフスが孤児の間で流行り、その遺体が街のあちこちに見られるようになると流石に無視が出来なくなってくる。
ただの餓死ならまだしも、感染症に罹った孤児の遺体は更なる感染を広げてしまう。
いずれ、先住民である彼らにも猛威が襲ってくる可能性だってある。
そこで彼らは、街の中で死んでいる孤児たちを集め巨大な穴を掘るとその中へ埋葬をしたのだ。
埋葬と言えば聞こえがいいが、用はただの処理だ。感染を広げないために必要なことをした。それだけだ。
だから彼らは黙祷も何も捧げず、愚痴をこぼしながら穴を埋めるためにスコップを振るう。