誰かの武器としての生き方

鬼一口は、一口で人間を食べてしまう恐ろしい妖怪だ。ミカサが目を見開いていると、キャスターが攫われた人の名前を読み上げていく。

その名前を聞いた刹那、すぐにミカサは立ち上がり袴から特殊警察の制服に着替えた。そして、無線を手にする。

「ハクサ隊長、聞こえますか？」

「ミカサ！？まさか、ニュースを……」

「はい。私は、チハヤを助けに行きます」

ハクサが答える前にミカサは無線を切る。そして、武器を体に仕込んで家を飛び出した。



鬼一口はイヅナの山奥に住処を作っている。ミカサは住処へと走った。こうしている間にも、チハヤたちの命が危険にさらされている。

鬼一口を殺してしまうかもしれない。しかし、チハヤを失うことの方がミカサにとっては何よりも怖いのだ。足を止めることなどできない。

道を走っていると、ミカサの目には人や妖怪の姿が映る。ここは、妖怪と人間が共存する唯一の居場所。楽しげに人と笑う妖怪の姿を見て、ミカサは少しだけハクサやチハヤの言葉の意味がわかった気がした。