誰かの武器としての生き方
しかし、ミカサは隊の中で孤立したり、誰かと争ったりすることが多い。それは、凶悪犯たちを捕まえずに殺してしまうことだ。その冷酷な態度から、正義感の強い隊員と揉めることが多い。

ミカサがこうなってしまったのには、大きな理由がある。

山を降り、ミカサは深夜の街を歩く。蔵造りの立派な街並みがイヅナの特徴だ。

住宅街に来た時、ミカサは家の明かりがついていることに気づいた。まだ同居人が起きているのだ。

「ただいま」

ミカサがそう言い玄関を開けると、「おかえりなさい!任務、大丈夫だった?」と言いながら、白い花柄の赤地の着物に紺色の袴の女の子が走って来る。ミカサと背丈は同じほどだ。

「チハヤ、まだ起きていたの?」

「だって、ミカサのことが心配だったから……」

初めて微笑みを見せたミカサに、チハヤと呼ばれた少女は「お風呂沸いているよ」と言う。

彼女は小桜(ござくら)チハヤ。ミカサと幼い頃から一緒に暮らしている。

ミカサとチハヤは、もともとはイヅナの人間ではなかった。しかし、家族が妖怪に襲われて亡くなってしまったのだ。
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