リリカルな恋人たち
B.恐怖!精神的ストーカー
B.


品出しが済んで暇だったので半額になってるバックナンバーをペラペラ捲っていたわたしは、目玉が飛び出るくらい驚いた。
もうほんとうに、ホラー映画かもしくはどこぞのオヤジかってくらいに、それそのものがビヨーンて出たイメージ。


「やっほー、友」


声に反応して顔を上げたら、しっかり知世の顔が見えたので、あ、よかった目玉ちゃんとついてる、と安堵する。


「休憩何時? 入れるなら一緒に行こうよ。わたしもう二十分しかないけど」


レジカウンターにファッション雑誌を置いた知世は腕時計を確認した。


「う、うん」


わたしは知世の分と、その半額になった雑誌を精算し、店長に許可を取ってから知世と一緒にカフェに行った。

ここは郊外のショピングモール。
わたしはそこのテナントである本屋で副店として働いている。

知世は人気アパレル店の店長。
もともと社食で休憩時間が一緒になって、年が同じってこともあり、話が弾んで仲良くなった。


「ハワイといえば、定番よね」


ガラス張りになってて通路が見える、一番端のテーブル席に向かい合って座る知世は、紙袋のなかから箱を取り出した。


「ありがとう、チョコレート? めっちゃ好きだから嬉しい」


わたしは一口飲み込んだ抹茶ラテのカップをテーブルに置いて、両手で受け取る。


「どうだった? 新婚旅行」
「楽しかったよ。今回は成田で喧嘩もしなかったし」


前回、知世たち夫婦がまだ恋人同士だったとき、旅行の前に空港で大げんかして、丸くおさめるためにわたしまで出動する騒ぎがあった。

あのときは、小柄な癒し系で小動物みたいに可愛い知世がオラオラ系に進化して肩で息をする姿を初めて見たので、わたしは狼狽してしまったんだけど、どうどう言ってなんとかなだめたんだっけ。

懐かしいな。大変だったなぁ。
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