マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
切り替えのスイッチがどこかに着いているのかと思うほど、完全にオフモードになった彼はとてもマイペース。私が居ても居なくても全然問題ないと言う感じ。

毎朝早くに起きてランニングに行き、シャワーを浴びた後朝食を作る。朝食を食べたらタブレットで今朝のニュースや株価をチェックした後、出社準備を始める。
帰宅後は料理をしたり仕事をしたり本を読んだりと、まちまちだ。夕食後にコーヒーを飲みながらソファーでくつろいでいることもある。

最初、食事の時以外はお互い部屋に籠って顔を合わせることもあまりないかと思っていたが、こんなふうに高柳さんが気兼ねなく過ごすのを見ているうちに、私もあまり気を張らないようになってきた。

一緒に暮らしているからと言って、私のことをあれこれと訊いてきたり「ああしろこうしろ」とうるさく言わない。必要以上に慣れ合うことも触れ合うこともしないから、私の緊張もましになってきたのだろう。

あまりにもこちらのことを気にしない彼を不思議に思ったけれど、『君にはさほど興味はない』とお見合いの後に言っていたことを思い出して、ストンと腑に落ちた。

“女”がどうとか言う前に、彼は“青水雪華”に全く以って興味はないのだ。

(私に手を出さなくても、相手に不自由することはないものね)

非常階段での出来事を思い出し、一人納得する。

(私は期間限定の妻として生活して、最後に彼の望みどおりに『結婚には合いませんでした』って佐知子さんに報告すればいいだけ)

スープを一口飲んで、もぐもぐとじゃがいもを咀嚼する。コンソメのシンプルなスープは優しい味だ。
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