マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
(なんだかんだで高柳さんはやっぱり優しい。ささいな気遣いが出来るのはあの頃と変わってないんだわ……)

そんなことを考えながら、現在私は夕食の食器を洗っている。
食事を作って貰ったので片付け当番は私。食事作り担当だった高柳さんは現在入浴中だ。

(厳しいのは仕事の時だけ?でも別に仕事だって無意味にきつくあたることはないし、基本的に正しいことしか言わないわ)

あの“無表情”が彼を必要以上に厳しく見せているのかもしれない、と思う。

(職場にプライベートを持ち込むと“鉄壁”の塩対応になるのはよく分かったかも…)

気持ちは分からないでもない。私だって仕事に私事を持ち込みたくない派だ。
私には仕事にプライベートを持ち込む余裕なんてない。定年までしっかり働いて、手堅く退職金を貰わなくては。

「………めざせ、退職金」

「何を目指すんだ?」

「わっ!」

急に真後ろから聞こえた声にビクッと体が跳ね、その拍子に手から皿がツルンと落ちた。ちょうど重ねてある皿の上に落ちて、皿同士がガシャンと音を立てた。
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