マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~

基本的に交互に夕食当番をするので、作った料理が少しずつ余ることがある。朝食に回したり次の日の夜に食べたりして捨てることはないのだけれど、そんなことが何度目か続いた日、彼がある提案をした。

『弁当を持って行ったらどうだ?』

『え?私がですか?』
『ああ。俺は昼食をいつどこで食べるかその日にならないと分からないことが多いが、青水はたいてい社食に行くだろう?』

『そうですね』

よく一緒に昼食を取る大澤さんがお弁当の日もあるから、外に食べに行くよりも社員食堂に行くことの方が多い。食堂で手作り弁当や買ってきた物を食べる社員は結構いる。

『家で残った料理や食材で弁当を持って行ったら食費も浮くし、あまり物も減って一石二鳥だろう』

『そうですが……朝からお弁当を作れるほど、料理の腕は上達していません』

『――ああ』

悲しい事実を肯定されて若干へこみそうになった時

『じゃあ俺が作ろう』

『え?』

『毎日じゃなくてもいいか?』

『そんな、そこまでしていただかなくても――』

『いや、どうせ朝食を作るついでだ』

毎朝、夜干しの洗濯物の片づけを私がしている間に、彼が朝食の準備をする。それが平日朝のルーティンになっている。

最終的に『余り物を詰めるだけだから』という彼の発言を真に受けて、『それでしたら』と申し出に甘えることにした。


< 114 / 336 >

この作品をシェア

pagetop