マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
ちょうど六年前の秋。社会人一年目だった私が初めて配属されたのは、関東統括支社新宿支店の営業部。そこで私についたOJT(オン・ザ・ジョブトレーニング)トレーナーが、三つ上の矢崎さんだった。
営業二課は、スーパーやコンビニなどの量販店を対象に営業活動を行うことが業務の中心だ。
彼とはデスクも隣同士で、外回り、帰社後の事務処理など、ほとんどの時間を共に過ごす。どうかしたら外回りの間に取るランチも一緒だったので、私は彼から離れることはほとんなかった。
そうして三か月を過ごしたある日、私は彼に告白されたのだった。
彼に対して先輩社員以上の気持ちを持っていなかった私は、彼の告白をすぐにお断りしたのだけど、それ以来事あるごとに誘われ口説かれて、彼の熱意に絆された私は、彼の申し出に肯いた。
それなのに、付き合い始めて二か月後、私はあっけなく振られることになる。
『こんなつまらない女だと思わなかった。見かけ倒しのハリボテ女だな。』
―――そんな言葉と共に。