マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
「……料理下手で申し訳ありません」

思い出し笑いがツボにはまったらしい高柳さんは、顔を伏せたまま笑いを噛み殺している。
私の低い声に気付いた彼が伏せていた顔を上げた。笑っていたせいで目元がいつもより柔らかい。

「笑ってすまない」

「いえ、変な夕飯を食べさせられた高柳さんには、笑う権利くらいあります」

「別に変だとは思っていない。インパクトが強すぎただけで…」

彼は私の機嫌が悪いことを悟ったのか、一生懸命フォローを入れようとする。

「仕事のお疲れを、笑いで癒せたなら本望です」

「………」

「さ、温かいうちに食べてください」

一週間経った今でも笑えるくらいの衝撃を“鉄壁統括(アイアンGM)”に与えられたのなら、私の料理下手だって捨てたもんじゃない。

そう考えると笑えるが、こちらをチラチラと気にする彼の様子が楽しくて、私は憮然とした表情のままキッチンへと戻った。

冷蔵庫を開け中のものを取り出す。大きいグラス二つと小さいグラスと一緒に、それをダイニングテーブルへと運ぶ。

「今日はこれにします」
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