マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
「いや、えっと…」
「他のにはまだ箸を付けていないから大丈夫だ」
そういう問題でもないような……、と逡巡していると、彼がサッと立ち上がりキッチンから小皿と箸を持ってきた。
「どんな料理にどんな酒が合うのかを知ることも大事だ。枝豆とばかり一緒にされたんじゃ、ビールが可哀想だぞ」
それを持ち出されると弱い。
「ビールも俺が帰ってくるのを待つ必要はない。基本的に酒は料理と共に口にすることが多い。マリア―ジュを考えることは今後の仕事にも役に立つと思うから、青水も夕食を食べる時に料理との相性を確認したらいい」
「―――はい」
たしかに。
一緒に暮らし始めてから、料理とお酒の相性を考えながら飲むようになった。
こうして高柳さんとお酒の味や料理との相性についてアレコレ語り合うのが密かに楽しい。
これまでは、料理とお酒のマリア―ジュなんて居酒屋やレストランの専売特許だと決めつけていたから、目からうろこだ。
「そう言えば、母がよく『お好み焼きにはドライ系がいい』とか『お鍋には地ビールがよく合う』とか言っていました」
「裕子さんは本当にビールが好きだったんだな」
彼は母のことを『裕子さん』と呼ぶ。きっと佐知子さんがそう呼んでいたのを聞いたのだろう。
「裕子さんと一緒に青水もビールを飲まなかったのか?」
「母が亡くなったのは、私は成人してから数か月後でした。だから一緒に飲んだのは数えるほどなんです」
「そうだったのか……残念だったな」
高柳さんは母の写真に視線を向けた後、しんみりとそう言った。
「他のにはまだ箸を付けていないから大丈夫だ」
そういう問題でもないような……、と逡巡していると、彼がサッと立ち上がりキッチンから小皿と箸を持ってきた。
「どんな料理にどんな酒が合うのかを知ることも大事だ。枝豆とばかり一緒にされたんじゃ、ビールが可哀想だぞ」
それを持ち出されると弱い。
「ビールも俺が帰ってくるのを待つ必要はない。基本的に酒は料理と共に口にすることが多い。マリア―ジュを考えることは今後の仕事にも役に立つと思うから、青水も夕食を食べる時に料理との相性を確認したらいい」
「―――はい」
たしかに。
一緒に暮らし始めてから、料理とお酒の相性を考えながら飲むようになった。
こうして高柳さんとお酒の味や料理との相性についてアレコレ語り合うのが密かに楽しい。
これまでは、料理とお酒のマリア―ジュなんて居酒屋やレストランの専売特許だと決めつけていたから、目からうろこだ。
「そう言えば、母がよく『お好み焼きにはドライ系がいい』とか『お鍋には地ビールがよく合う』とか言っていました」
「裕子さんは本当にビールが好きだったんだな」
彼は母のことを『裕子さん』と呼ぶ。きっと佐知子さんがそう呼んでいたのを聞いたのだろう。
「裕子さんと一緒に青水もビールを飲まなかったのか?」
「母が亡くなったのは、私は成人してから数か月後でした。だから一緒に飲んだのは数えるほどなんです」
「そうだったのか……残念だったな」
高柳さんは母の写真に視線を向けた後、しんみりとそう言った。