マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
『そんなこと言ったって……』
眼鏡のふちからチラリと親友を見る。救いを求めるような私の視線に、彼女ははぁっとため息をついた。
『もう二度と会えなくなるかもしれないんだよ?』
『もう二度と、会えない……』
言われた言葉を反芻した途端、私は雷に打たれたような衝撃を受けた。
『そうだよ、ゆっかちゃん。今気持ちを伝えないとずっと後悔するかもしれないよ?』
彼のことは遠くから見ているだけで満足だった。
その低く心地良い声が耳に届くだけでドキドキした。自分ではない誰かに微笑みかける、その笑顔に釘付けになった。
彼を独占したいなんて、そんな烏滸がましいことを考えたことはない。
幼い私は、自分の恋心を受け入れるだけで精一杯だったのだ。
彼が卒業してしまったら、もう二度と会えなくなるかもしれない。
そんな当たり前のことに今まで気付かなかった私は、親友の言葉に愕然とした。
『私、告白する』
そう宣言した私に、親友は『応援する!』と言ってくれた。