マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
そんなこんなで怒涛の日々に突入してすぐに、料理初心者の私は夕飯作りに手が回らなくなった。

いつぞや高柳さんに言った『ここぞという時にとってある』と偉そう言ったあのメニューを早々と解禁してしまい、テーブルに乗ったそれをまじまじと見た後、彼はとある提案をしてくれた。

『仕事のピークが終わるまで、食事作りは俺が担当しよう』

その代り毎日の洗濯と休日の掃除は私がする。

それは私にとっては救いの神と言えるような申し出だった。


高柳さんとは毎日同じ時間まで残業するので、自然と帰りは一緒に会社を出ることになる。
高柳さんのマンションは駅のすぐ目の前と言う好立地なので、電車が動いている時間なら何の問題もない。けれど彼は、『夜遅いから』と頑として私が一人で帰ることを許してくれず、強制的に車に乗せられ一緒に帰宅する。

一度、幾見君に知られたくないからと無理矢理電車で帰った時に、降りた駅の改札前に彼が立っているのが見えたときの驚愕は忘れられない。

(徒歩五分なんですよ!?)

深夜の駅構内で叫びたくなった。

それ以来、遅くなった時は大人しく高柳さんの車で一緒に帰ることにしている。
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