マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~

そんな高柳さんは、家に帰り着くと先に私を風呂へと送り込み、自分は夕食作りに取り掛かる。
私が風呂から上がり髪を乾かして出ると、ちょうど良く『いただきます』が出来るようになっている、という何とも贅沢な待遇を受けていた。

(お嫁さん……)

目の前に並べられたバランスの取れた料理を見ながら、何度もそう思った。
もしお嫁さんにするなら、私より高柳さんの方だろう。

(このままだと二か月後に“結婚不適合”の烙印を押されるのは私の方だわ……)

それでも私には何の問題もない。

(このまま一人で生きていくのだと、随分前に覚悟は出来ているでしょう?)

テーブルの上のビアグラスを見ながら、そう自分に念を押す。

(分かっているわ。これは今だけだって)

自身に返した言葉に、胸の奥が軋んだ音を立てた気がした。


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