マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
「ここですか?」
「ああ、そうだ」
着いたのはモールの中の大手スーパーマーケット。食品売り場だ。
「食品の買い出し?」
「ああ―――行くぞ」
高柳さんは颯爽とカートを押して野菜コーナーへと進んで行く。
(なんだ…普通に食品の買い出しだったんだ……)
休みの日に“買い物”に誘われて、すっかりデートでもするような気分になっていた昨日からの自分を叱りつけたい。
(そうならそうと言ってよ……)
勝手に勘違いしたのは自分だ。完全なる八つ当たりだと分かっている。分かってはいるが―――。
めったに穿かないチュールスカートの長い裾を見下ろしながら、自分を落ち着かせようと長く息を吐きだした。