マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
「これだけあれば週半ばまでもつだろう」

様々な食材が乗せられて重たくなったカートを見ながら高柳さんが言う。

交代制の夕飯当番に慣れて来た先日。
料理で使う材の確保がややこしい、という話になった。

例えば、私がカレーの為に買った人参の残りがあるのに翌日高柳さんが買って来たり、逆に彼が次回の料理で使おうと思っていた油揚げを私が使ってしまったり。
毎日冷蔵庫の中身をチェックしてから仕事に行くわけではないので、記憶があやふやで買った材料が余ったりすることもある。

そんなことから、週末一緒に買いものをして、ある程度お互いが何を作るのかを把握しておいた方がいいのではないか、という話になったのだ。


レジを済ませた食材の乗ったカートを押して進む高柳さんに着いて行く。

(そっちは駐車場とは反対側だけど……)

その疑問はすぐに解決した。

「冷蔵ロッカー……?」

「ああ。ここにいれておけば、のんびり買い物できるだろう?便利だが数が少ないから早めに買い出しを済ませて確保しておきたかったんだ」

「それで…」

日曜日だというのに、早めの時間に家を出たのはそういうわけだったのか。

「何が見たい」

冷蔵ロッカーに荷物を移した高柳さんが、私を見て言った。

「え?」

「何か見たいものや行きたい店はないのか?」

高柳さんの台詞に停止する。
そんな私を高柳さんはじっと見下ろして、少しの間を置いてから口を開いた。

「なんだ、ないのか」

「え…いえ、あ、あります!」

反射的に言葉が飛び出す。
実は昨日誘いを受けた後、ここに入っているショップを密かに調べていたのだ。

「じゃあ、そこに行こう」

「はい」

高柳さんの隣に並んで歩き出した足元で、スカートの裾がふわりと揺れた。


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