マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
スラリと伸びた背。ガッチリとした肩幅。まくった袖から伸びる腕はたくましく、その大きな手が温かいことを思い出して、性懲りもなく顔が火照りかける。
職場での隙の無いスーツ姿からは想像もできないエプロン姿に、胸の奥がほの甘く疼く。
職場で見る彼は、その呼び名の通りまったく隙がない。
きっちりと整髪剤で固められた髪も、体にピッタリと合った三つ揃えのスーツも、そしてその表情も。寸分も乱れることのないその姿は、“鉄壁”そのものだ。
そんな上司とこうして同じキッチンでエプロンを着けて料理をしているなんて―――
「そろそろいいんじゃないか?」
「むっひゃっ」
いきなり耳の近くで降って来た声に、ビクッと肩が跳ね、変な声が出た。
「むっひゃっ、て……」
くくくっ、と噛み殺した笑い声がしたと思ったら、お腹を抱えた彼がそのまま大きな声を出して笑い始めた。
「あははっ」
大きな口を開けて隠すことなく笑うその顔に、私はただ釘付けになった。
「はははっ、そのリアクションはないだろっ……くくっ」
言いながらまた笑っている。
目尻に皺が寄り、綺麗な顔をくしゃっと潰して笑う、その笑い方――
(懐かしい……)
それは何年も前に見たきり、もう二度と見ることがないと思っていた懐かしい笑顔だった――
職場での隙の無いスーツ姿からは想像もできないエプロン姿に、胸の奥がほの甘く疼く。
職場で見る彼は、その呼び名の通りまったく隙がない。
きっちりと整髪剤で固められた髪も、体にピッタリと合った三つ揃えのスーツも、そしてその表情も。寸分も乱れることのないその姿は、“鉄壁”そのものだ。
そんな上司とこうして同じキッチンでエプロンを着けて料理をしているなんて―――
「そろそろいいんじゃないか?」
「むっひゃっ」
いきなり耳の近くで降って来た声に、ビクッと肩が跳ね、変な声が出た。
「むっひゃっ、て……」
くくくっ、と噛み殺した笑い声がしたと思ったら、お腹を抱えた彼がそのまま大きな声を出して笑い始めた。
「あははっ」
大きな口を開けて隠すことなく笑うその顔に、私はただ釘付けになった。
「はははっ、そのリアクションはないだろっ……くくっ」
言いながらまた笑っている。
目尻に皺が寄り、綺麗な顔をくしゃっと潰して笑う、その笑い方――
(懐かしい……)
それは何年も前に見たきり、もう二度と見ることがないと思っていた懐かしい笑顔だった――