マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
《二》
二
残業後の午後七時。
慌ただしい平常運航の業務に追われて、毎日があっという間に経つ。
自社ビルを後に、駅までの道を歩く。陽が暮れて暗くなった歩道を、街路樹に施されたLEDがキラキラと照らしている。
結局あれから矢崎さんに返信をしていない。
(避けてないで、一度きちんと話した方がいいのかもしれない……)
これから顔を合わせる機会が増える彼と、気まずいまま仕事をしたくない
(私が逃げるから面白がって追ってくるのかも……)
付き合う前から感じていたが、彼はプライドが高いタイプで、自分が袖にされることが気にくわないのだろう。しかも昔自分が振った女に。
(明日きちんと返信をしよう)
そう思ったその時、後ろからぐっと肩を掴まれた。
「わっ」
驚いた声を上げると、後ろから「俺だ」と声がした。
「やっ、矢崎さん!」
「久しぶりだな」
「ど、どうして……」
「いつまで待っても誰かさんが連絡先を教えないからな。とうとう会社のメールまで無視しやがるし」
「え、っと…その件でしたら、明日改めてきちんとご連絡を入れようと――」
「もういい。俺がこうして直接来たんだ。――行くぞ」
「あっ、ちょっ…」
私の手首をグッと握ると、矢崎さんはそのまま歩き出した。
残業後の午後七時。
慌ただしい平常運航の業務に追われて、毎日があっという間に経つ。
自社ビルを後に、駅までの道を歩く。陽が暮れて暗くなった歩道を、街路樹に施されたLEDがキラキラと照らしている。
結局あれから矢崎さんに返信をしていない。
(避けてないで、一度きちんと話した方がいいのかもしれない……)
これから顔を合わせる機会が増える彼と、気まずいまま仕事をしたくない
(私が逃げるから面白がって追ってくるのかも……)
付き合う前から感じていたが、彼はプライドが高いタイプで、自分が袖にされることが気にくわないのだろう。しかも昔自分が振った女に。
(明日きちんと返信をしよう)
そう思ったその時、後ろからぐっと肩を掴まれた。
「わっ」
驚いた声を上げると、後ろから「俺だ」と声がした。
「やっ、矢崎さん!」
「久しぶりだな」
「ど、どうして……」
「いつまで待っても誰かさんが連絡先を教えないからな。とうとう会社のメールまで無視しやがるし」
「え、っと…その件でしたら、明日改めてきちんとご連絡を入れようと――」
「もういい。俺がこうして直接来たんだ。――行くぞ」
「あっ、ちょっ…」
私の手首をグッと握ると、矢崎さんはそのまま歩き出した。