マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
《三》
三
パタン――
ドアが閉まるその音を、私は大きな温もりに包まれながら聞いた。
何が起こったのかすぐには理解できない。
センサーポーチライトだけが私達の足元を照らす真っ暗な玄関。
分厚いコートを着ているのに、私の体をすっぽりと包んでいるものが堅く逞しいことが伝わってくる。
その腕に少し苦しいくらいにぎゅっと力を込められた時、私は高柳さんに抱きしめられているのだと、初めて理解した。
カッとつま先から頭まで、まるで火が点いたみたいに熱くなって、心音がどんどん大きくなっていく。ハッと息を吸い込んだまま口を開くことすら出来ない。頭の中は真っ白だ。
耳の先に当たった吐息に肩を竦ませた瞬間、低い声が鼓膜を震わせた。
「――と付き合っているのか?」
「え」と言おうとしたが音にはならなかった。背中に回された腕に力が込められる。
「幾見と付き合っているのか?」
「っ、」
「それともこれからか?」
畳み掛けるように問う高柳さんは、私に返事をさせる隙を与えない。
私も彼の言うことに驚いてしまって、頭の中では「ちがう」と叫んでいるのに声に出すことが出来ずにいた。
パタン――
ドアが閉まるその音を、私は大きな温もりに包まれながら聞いた。
何が起こったのかすぐには理解できない。
センサーポーチライトだけが私達の足元を照らす真っ暗な玄関。
分厚いコートを着ているのに、私の体をすっぽりと包んでいるものが堅く逞しいことが伝わってくる。
その腕に少し苦しいくらいにぎゅっと力を込められた時、私は高柳さんに抱きしめられているのだと、初めて理解した。
カッとつま先から頭まで、まるで火が点いたみたいに熱くなって、心音がどんどん大きくなっていく。ハッと息を吸い込んだまま口を開くことすら出来ない。頭の中は真っ白だ。
耳の先に当たった吐息に肩を竦ませた瞬間、低い声が鼓膜を震わせた。
「――と付き合っているのか?」
「え」と言おうとしたが音にはならなかった。背中に回された腕に力が込められる。
「幾見と付き合っているのか?」
「っ、」
「それともこれからか?」
畳み掛けるように問う高柳さんは、私に返事をさせる隙を与えない。
私も彼の言うことに驚いてしまって、頭の中では「ちがう」と叫んでいるのに声に出すことが出来ずにいた。