マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
《四》
四
「それじゃ、私たちはそろそろ」
佐知子さんの声に意識が浮上する。
ハッと我に返った自分の前には、少しだけコーヒーの残ったカップがある。
(わ、私……なにしてた?)
無意識のうちに受け答えしていたから、何を話したか覚えていない。
いつのまにか終わっていたコース料理も、何を食べたのやら―――。
「そういうことだから、高柳君。雪華ちゃんを宜しくお願いしますね」
「頼んだぞ。高柳君」
「はい。責任をもってお送りいたします」
(えっ!?)
佐知子さん達三人の間で交わされている会話の意味が分からずに、瞬きを繰り返している私に「じゃあまた連絡するわね、雪ちゃん」と、佐知子さん夫婦は去って行ってしまった。
「では我々も行きましょうか」
「え?」
彼はちらりとこちらを一瞥した後、にこりともせずに「車で来ていますので家まで送ります」と口にした。
「いえ、私は自分で」
「帰れます」と私が言い終わる前に、彼はエレベーターの方へ向かって歩き出す。
何にせよ、エレベーターでロビー階に降りなければ帰ることは出来ないので、私は黙ってその後ろから着いて行った。
「それじゃ、私たちはそろそろ」
佐知子さんの声に意識が浮上する。
ハッと我に返った自分の前には、少しだけコーヒーの残ったカップがある。
(わ、私……なにしてた?)
無意識のうちに受け答えしていたから、何を話したか覚えていない。
いつのまにか終わっていたコース料理も、何を食べたのやら―――。
「そういうことだから、高柳君。雪華ちゃんを宜しくお願いしますね」
「頼んだぞ。高柳君」
「はい。責任をもってお送りいたします」
(えっ!?)
佐知子さん達三人の間で交わされている会話の意味が分からずに、瞬きを繰り返している私に「じゃあまた連絡するわね、雪ちゃん」と、佐知子さん夫婦は去って行ってしまった。
「では我々も行きましょうか」
「え?」
彼はちらりとこちらを一瞥した後、にこりともせずに「車で来ていますので家まで送ります」と口にした。
「いえ、私は自分で」
「帰れます」と私が言い終わる前に、彼はエレベーターの方へ向かって歩き出す。
何にせよ、エレベーターでロビー階に降りなければ帰ることは出来ないので、私は黙ってその後ろから着いて行った。