マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
第九章 遠雷
《一》
一
時間の流れは恐ろしいほどに早く、年を越して新年になった。
二〇二〇年―――私達にとっての勝負の年だ。
二日の昼下がり。外はどんよりと曇っている。
昨日まではお正月らしい気持ちの良い快晴だったのにな、と思いながら、私は一人ぼんやりと外を眺めていた。
先月、突然現れた矢崎さんはあれ以来姿を見せない。私用メールも来なくなったので最近やっと少しホッとしている。
あの日、帰宅した玄関で高柳さんに抱きしめられてキスされそうになったところから逃げだした私は、部屋に籠っていつのまにかそのまま眠ってしまっていた。
早朝に目が覚めて、様子を伺いながら部屋から出ると、家の中はシンと静まり返っている。ダイニングテーブルにはラップのかかった朝食とお弁当の包み。
高柳さんの部屋の扉に視線を向けてみるが、開く気配はない。私以外の人の気配がしなかった。
ふとテーブルに視線を落とすと、お弁当の隣にある小さなメモがある。
【出張なので先に出る。明後日には帰ってくるから留守を頼んだ】
(そういえば、そうだったわ……)
職場で聞いていたのに、すっかり忘れていた。
時間の流れは恐ろしいほどに早く、年を越して新年になった。
二〇二〇年―――私達にとっての勝負の年だ。
二日の昼下がり。外はどんよりと曇っている。
昨日まではお正月らしい気持ちの良い快晴だったのにな、と思いながら、私は一人ぼんやりと外を眺めていた。
先月、突然現れた矢崎さんはあれ以来姿を見せない。私用メールも来なくなったので最近やっと少しホッとしている。
あの日、帰宅した玄関で高柳さんに抱きしめられてキスされそうになったところから逃げだした私は、部屋に籠っていつのまにかそのまま眠ってしまっていた。
早朝に目が覚めて、様子を伺いながら部屋から出ると、家の中はシンと静まり返っている。ダイニングテーブルにはラップのかかった朝食とお弁当の包み。
高柳さんの部屋の扉に視線を向けてみるが、開く気配はない。私以外の人の気配がしなかった。
ふとテーブルに視線を落とすと、お弁当の隣にある小さなメモがある。
【出張なので先に出る。明後日には帰ってくるから留守を頼んだ】
(そういえば、そうだったわ……)
職場で聞いていたのに、すっかり忘れていた。