マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
「わ、私は平気なので…放っておいてください……」

下ろしたままの髪が強い風にあおられ、露わになった首元がスゥっと冷気にさらされる。

ピカッと走った閃光に反射的にギュッと目をつむった。
次の瞬間――

ふわり。体が宙に浮いた。

「きゃあっ」

何ごとかと両目を見開くと、すぐ近くに高柳さんの顔。
私は彼に抱え上げられていた。

「落とされたくなかったらちゃんと掴まっていろ」

「っ、」

私に視線を向けることなく真っ直ぐ前だけを向いたまま、高柳さんは人ひとりを抱えているとは思えない程の平然とした顔でどんどん進んで行く。
そうしてマンションに帰り着くと同時に、空からは白いものが降り始めた。


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