マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
トクントクン、と一定のリズムを刻む彼の心臓の音。
背中を撫でる大きな手。
静かに瞳を閉じて呼吸を整え、私は言葉を続けた。
「それ以来、カミナリがダメなんです…情けないですよね……」
「情けなくなんてないさ」
「そんなこと……」
左右に小さく振った頭を、ゆっくりと大きな手が撫でた。
「青水は自分の力でちゃんとやっている。俺が保証する」
「高柳さんが保証……」
「ああ。俺のお墨付きじゃ不安か?」
「…そんなことありません。敏腕上司からの保証なら安心です」
ふふっと小さく笑うと、頭を撫でていた手が止まった。
「違うだろ」
さっきよりも低く呻るような声。
職場で私たち部下を注意する時と同じ声色に、思わず顔を上げると、瞳がぶつかった。声色とは逆に、私を見つめる瞳は甘く柔らかい。
吐息が触れるほど近い距離。
完全に固まった私を見ながら彼は優しく微笑んだ。
「上司から、じゃない――夫からの保証だ」