マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
第一章 黒歴史との再会
《一》
一
ピピピピピピピピ
「さむ……」
耳元で音を立てているスマホのアラームを止めると、体の横に落ちているタオルケットを手繰り寄せる。九月も半ばになろうかというのに、連日の熱帯夜のせいで夜中もエアコンが欠かせない。どうやら寝ている間にエアコンの温度を下げていたらしい。
「どうりで寒い夢見るわけね……」
寝起きの頭でぼんやりと、今しがた見ていた夢を思い返した。
今とは全然違う自分。
一途で、必死で―――でも他人(まわり)が見えていなくて。
あの頃の私には“若々しい”というよりも“幼い”という言葉がピッタリだった。
「……若気のいたり」
乾いた口に乗せた言葉がブーメランのように戻ってきて、胸の奥に仕舞った何かにぶつかった。けれどすぐにそれに気付かない振りをして、私はベッドから抜け出した。
私は青水雪華。二十七歳の都内で働くごく普通のOLだ。
土曜日の朝八時。
いつのなら平日の疲れを取るべく遅くまで寝ているのだけど、とある人との約束の為休日にしては早起きをした。
食パンを焼かずに齧り、インスタントのコーヒー牛乳で流し込む。キッチンに立ったまま朝食を取りながら、これから数時間のうちにしなければならないことを頭の中で組み立てた。身支度以外にも出掛けるまでにするべきことは沢山あるのだ。
洗濯、掃除、その他諸々。生活するのに必要なことは全て、自分でやらなければ誰もやってはくれない。
平日は仕事で遅くなるから、だいたい土日のうちに家のことをまとめてやっておくことにしている。決して好きではないそれらのことも、何年も一人暮らしをやっているうちに気が付いたら身についていた。
ピピピピピピピピ
「さむ……」
耳元で音を立てているスマホのアラームを止めると、体の横に落ちているタオルケットを手繰り寄せる。九月も半ばになろうかというのに、連日の熱帯夜のせいで夜中もエアコンが欠かせない。どうやら寝ている間にエアコンの温度を下げていたらしい。
「どうりで寒い夢見るわけね……」
寝起きの頭でぼんやりと、今しがた見ていた夢を思い返した。
今とは全然違う自分。
一途で、必死で―――でも他人(まわり)が見えていなくて。
あの頃の私には“若々しい”というよりも“幼い”という言葉がピッタリだった。
「……若気のいたり」
乾いた口に乗せた言葉がブーメランのように戻ってきて、胸の奥に仕舞った何かにぶつかった。けれどすぐにそれに気付かない振りをして、私はベッドから抜け出した。
私は青水雪華。二十七歳の都内で働くごく普通のOLだ。
土曜日の朝八時。
いつのなら平日の疲れを取るべく遅くまで寝ているのだけど、とある人との約束の為休日にしては早起きをした。
食パンを焼かずに齧り、インスタントのコーヒー牛乳で流し込む。キッチンに立ったまま朝食を取りながら、これから数時間のうちにしなければならないことを頭の中で組み立てた。身支度以外にも出掛けるまでにするべきことは沢山あるのだ。
洗濯、掃除、その他諸々。生活するのに必要なことは全て、自分でやらなければ誰もやってはくれない。
平日は仕事で遅くなるから、だいたい土日のうちに家のことをまとめてやっておくことにしている。決して好きではないそれらのことも、何年も一人暮らしをやっているうちに気が付いたら身についていた。