マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
決起会はそのまま無事に終えた。
五時半に閉会して、そのまま二次会へと外へ繰り出して行く人も大勢いたが、私達本部チームは会場の後片付けに追われる。
主催側なのでアルコールは口にしなかった。もちろん義務ではないので、幾見君や大澤さんには適度に飲んでも良いと言ってある。こういう場ではお付き合いも大事な仕事。私の企画リーダーの立場で無ければ飲んでいただろう。
高柳さんはCEOと常務の見送りに出たまままだ戻ってきていない。
幾見君にはケータリング手配全体を任せてあって、今日この後ケータリング会社のスタッフが回収に来る手はずになっているので、運び出す物を裏手にまとめて持って行って貰っていた。
総務から助っ人に来てくれていた社員は、既に定時で引き揚げて貰っている。
「大澤さん、時間は大丈夫ですか?」
「はい。今日は前以て申請してありますから」
「助かります」
人手が欲しい今、こうして大澤さんが残業してくれるのが本当にありがたい。こういう、ここぞという時にこちらからお願いしなくても手を貸してくれる気遣いが、本当に大人だと思う。
「これを返却したらもう終わりです。大澤さんはもう上がって下さいね」
片付けをほぼ終え、レセプションホールの鍵を胸の前でぶら下げると、大澤さんが「了解です」と頷いた。
「主任、お疲れみたいですから、連休の間しっかり休んでくださいね」
大澤さんは自分の目元を、ちょんちょんと指差した。
一瞬何のことか分からなかったが、すぐに理解して頬がじわっと熱くなる。
私の目の下の隈は、化粧では隠しきれなかったようだ。
「分かりました……」
「では、お疲れ様でした」
「お疲れ様です」
大澤さんに別れを告げると私はエレベーターホールへと向かった。