マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~

レセプションホールの鍵を総務に返却して、自席にある荷物を取り帰宅しようとオフィスを出た。
廊下を歩きながらぼんやりと外を見ると、窓の向こう側、ビルとビルの合間から閃光が走った。

(またなのっ!?)

この冬は大気が不安定でカミナリが起こりやすいと天気予報で言っていたけれど、こうも頻繁に鳴ってくれたらこちらの身が持たない。
稲妻に向かって文句をつけたい気持ちは山々だけれど、そう思っているうちにもう一度閃光が走って、私は恐怖に体を震わせた。

(と、とにかく…安全なところへ……)

一般的にはこのままでも十分安全なのだけれど、私的にはカミナリの音と光が届かない所へ行くまでは安全とは言えない。

竦みそうになる足を何とか動かして、前にも逃げ込んだ資料室まで行こうとした、その時――

「遅かったな」

「や、矢崎さん!」

私は行く手を阻まれた。
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