マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
矢崎さんは私のことを待ち構えていたように、出会い頭に手首を掴まれて、近くのミーティングルームへと押し込まれた。

「なっ、なにを……」

「お前が俺のことを無視するからだろう」

照明のスイッチを入れていない暗い部屋。
私は、壁に押し付けられるように矢崎さんに動きを封じられていた。

「離してくださいっ」

「散々焦らしておいてそれはないだろう?」

じりじりと迫るように距離を縮められ、体が後ろに下がろうとするが壁が邪魔してそれも出来ない。掴まれている腕を振りほどこうと試みるが、逃がさないとばかりに逆に力を込められた。

「わ、私なんかにかまってもつまらないと思います」

「つまらないかどうか確かめてみないと分からないだろう?」

何とか諦めて貰おうと早口で言い募った私に、不敵な笑みを浮かべながら矢崎さんが答える。

「あの頃よりはマシになったんじゃないのか?」

言いながら矢崎さんの左手が私の腰をすぅっと撫でた。ぶわっと全身が総毛立つ。
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