マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
しばらくすると再びドアがノックされ、高柳さんが入って来た。手には湯気の立つマグカップを持っている。
「飲めるだけでいい。温まるから」
差し出されたマグカップを両手で受け取る。温められたカップに触れた指先がじんと痺れて、いつのまにか冷えきっていたことを知る。
ゆっくりとカップに口を付けると、中身を少し口に含んだ。ホットミルクだった。
「おいしい……」
沸騰直前まで温められたミルクは熱々で、そしてはちみつの香りと味がしっかりとある。きっとたっぷり入れてくれたのだろう。
ふうふうと冷ましながらひとくち、ふたくちと飲み進めて行く。お腹の中がぼわっと温かくなって、体の中心に熱が戻ってくる感じがした。
どんなに長い間湯船に浸かっていても温めることの出来なった場所が、一杯のホットミルクで温まっていく。
カップの中が空になる頃には、さっきまでの強い嫌悪感が少しだけ薄らいでいた。
空になったカップを私の手から持ち上げた高柳さんは、それをベッドのサイドボードに置くと、私を布団の中に入るように促した。
「体が冷めないうちに眠ったほうがいい」
そう言って私に布団を掛けてくれ、壊れ物に触れるかのようにそっと優しく、大きな手が頭を撫でる。その心地良さに自然と瞼が下りた。
けれど――
『今のお前となら楽しめそうだ』
耳の奥に、ねっとりとした声が響いた。
「飲めるだけでいい。温まるから」
差し出されたマグカップを両手で受け取る。温められたカップに触れた指先がじんと痺れて、いつのまにか冷えきっていたことを知る。
ゆっくりとカップに口を付けると、中身を少し口に含んだ。ホットミルクだった。
「おいしい……」
沸騰直前まで温められたミルクは熱々で、そしてはちみつの香りと味がしっかりとある。きっとたっぷり入れてくれたのだろう。
ふうふうと冷ましながらひとくち、ふたくちと飲み進めて行く。お腹の中がぼわっと温かくなって、体の中心に熱が戻ってくる感じがした。
どんなに長い間湯船に浸かっていても温めることの出来なった場所が、一杯のホットミルクで温まっていく。
カップの中が空になる頃には、さっきまでの強い嫌悪感が少しだけ薄らいでいた。
空になったカップを私の手から持ち上げた高柳さんは、それをベッドのサイドボードに置くと、私を布団の中に入るように促した。
「体が冷めないうちに眠ったほうがいい」
そう言って私に布団を掛けてくれ、壊れ物に触れるかのようにそっと優しく、大きな手が頭を撫でる。その心地良さに自然と瞼が下りた。
けれど――
『今のお前となら楽しめそうだ』
耳の奥に、ねっとりとした声が響いた。