マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
「雪華」
名を呼ばれただけなのに、胸がきゅんと鳴る。
もう一度「雪華」と呼ばれ、おずおずと顔を上げる。私を見つめる瞳は、夜空を映した露のようにしっとりときらめいて、隠しきれないほどの色香が滲んでいた。
「俺は君の“特別”が欲しい――」
「私の特別……」
それって何だろう。彼は何が欲しいのだろう、と考える。
そんな私に、彼は少し困ったように微笑んだ。
「前の時は断ってしまったが、今度は俺からお願いしよう。雪華、君の“はじめて”を俺に下さい」
「っ」
絶句した私に高柳さんは「キスしてもいいか?」と畳みかける。
想いが通じ合った今、断る理由はない。
けれどだからといって、あの頃のように「さあどうぞ」と差し出しせる度胸もないのだ。
「あの……えぇっと……」
視線をあちこちにさまよわせながら、もごもごと口を動かす。そんな私を高柳さんはじっと見つめてから、私の頬を片手で包んだ。
「雪華……君が嫌なら無理にとは言わない」
眉を寄せて切なげにそう言われたら、もう逃げることは出来なかった。
「どうぞ」と言う代わりに、私は瞼をそっと下した。
名を呼ばれただけなのに、胸がきゅんと鳴る。
もう一度「雪華」と呼ばれ、おずおずと顔を上げる。私を見つめる瞳は、夜空を映した露のようにしっとりときらめいて、隠しきれないほどの色香が滲んでいた。
「俺は君の“特別”が欲しい――」
「私の特別……」
それって何だろう。彼は何が欲しいのだろう、と考える。
そんな私に、彼は少し困ったように微笑んだ。
「前の時は断ってしまったが、今度は俺からお願いしよう。雪華、君の“はじめて”を俺に下さい」
「っ」
絶句した私に高柳さんは「キスしてもいいか?」と畳みかける。
想いが通じ合った今、断る理由はない。
けれどだからといって、あの頃のように「さあどうぞ」と差し出しせる度胸もないのだ。
「あの……えぇっと……」
視線をあちこちにさまよわせながら、もごもごと口を動かす。そんな私を高柳さんはじっと見つめてから、私の頬を片手で包んだ。
「雪華……君が嫌なら無理にとは言わない」
眉を寄せて切なげにそう言われたら、もう逃げることは出来なかった。
「どうぞ」と言う代わりに、私は瞼をそっと下した。