マリッジライフ・シミュレイション～鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい～

母が離婚する前、隣に住んでいた一つ年下の女の子。
幼馴染のその子と俺はとある約束を交わした。

離婚と同時に母方の祖父母の家に引っ越した俺は、それ以来その子には会っていない。
十年以上も前のあの約束は、きっと果たされることはないだろう。

けれど、だからこそ俺は適当な相手と遊びのような付き合いをするつもりはなかった。

幼い時に彼女と過ごした日々は宝物のようにずっと胸の奥にしまってある。
その宝物に恥じない自分でいたい。

いつかまた、彼女―ゆきちゃん―に会える日が来たら、胸を張って笑顔で『幸せだ』と言えるように――


レンズの向こうの閉じた瞳。
鼻と鼻が触れ合う直前、俺はグッと奥歯に力を込め、軌道を逸らした。
ワンレンの前髪は三つ編みに入れ込まれ、むき出しになった額。小さくてすべすべしたそこに、俺はそっと口づけを落とした。