マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~

決起会から一か月経ち、私の生活は以前とほぼ変わらない日々を送っていた。

仕事上においては、何かのいざこざがあったとは思えないほど平和に忙しい。
幾見君とは上司部下として問題のない範囲で接することが出来ている。

以前彼に、はっきりと『私は高柳さんが好き』と告げた時、彼は『最初から俺に勝ち目はありませんでしたね』と言った。
高柳さんと付き合っていることは言わなかったので、まさかそんなふうに言われると思わず言葉に詰まる私に、幾見君は続けて『前に言ったことは、聞かなかったことにしてください』と言った。
その時の彼のほろ苦い笑顔に、私は黙って頷くことしか出来なかった。

一番の懸念だった矢崎さんは、私が風邪から復帰すると企画チームから外れていて、代わりに本来チーム入りする予定だった人がそのポジションに戻されていた。

プライベートでは、高柳さんとの同居を解消したので自宅マンションから前のように通勤し、自分で自分の身の回りのことをしている。料理も少しはするようになった。とはいえ、高柳さんのようにはいかず、弁当も時々しか作れない。枝豆一択の食生活から一歩抜け出せたかな、というくらいのものだ。


助手席の窓から外を眺めながら、そんなことをぼんやりと考えているうちに、私はいつのまにか眠りに落ちていた。

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