マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
「……か、ゆ…か、雪華」
「ん…」
「着いたぞ」
「えっ!」
隣から聞こえた声に、私は跳ね起きた。窓の外は薄暗い場所で多くの車が停められてある。地下駐車場か何かだと思った。
「大丈夫か?」
気遣うような声色に顔を向けると、心配げにこちらを見る高柳さんと目が合った。
「よく眠っていたから起こしたくはなかったのだが、いつまでもここにいるわけにもいかないから」
「ご、ごめんなさい…」
申し訳なさそうに謝られたけれど、悪いのは私。
運転している彼の隣で眠りこけてしまうなんて自分が信じられない。いくら昨夜チョコ作りで夜更かしした上に、緊張でちゃんと眠れなかったのだとしても――。
「いや、眠っていいと言ったのは俺だ。それに週末で疲れているのに、俺がこんなところまで連れてきてしまったからな」
シートの上で小さくなっている私の頭を優しく撫でると、高柳さんは「目が覚めたらならそろそろ行こうか」と私を車の外へと連れ出した。