マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
小箱を持った両手が小刻みに震える。それを突き出すと同時に下げた頭を上げることが出来ずに、ただ彼の反応を待った。
ドクドクドクドク――
心音が加速していく。
八年前のあの時よりも、今の方がずっと緊張している。若さゆえに突っ走れたあの頃と今の自分は違う。自分のことばかりを守ろうとしてしまうのは、年を取った分だけ傷つくのが怖いからだ。
「ありがとう」
柔らかな低音が降ってきたと思ったら、両手の先がふわりと軽くなった。ゆっくりと顔を上げると、小箱は彼の手の中に。
「そうか、今日はバレンタインだったな」
手の中の小箱をまじまじと見ながら「今気が付いた」と彼が呟く。
「他の人から貰わなかったんですか?」
思わず訊いてしまった。彼を狙っている女性たちには今日はまたとないチャンスの日だろう。きっと今日は一日色々な女性に捕まったのではないかと、内心ヤキモキしていたのだ。
「いや。……ああ、そういえば今日はやたら何かにつけて呼ばれるなとは思っていたが、絶対に定時で上がろうと思っていたから、必要最低限しかデスクから離れなかったんだ。仕事の用なら俺のデスクで聞けばいいだろう?」
「……」
「何人かはデスクの前で何かを出そうとしていたな…『仕事に関係ないものは不要だ』と言ったら、書類だけおいて去って行ったが」
私は今日はほとんど所定の位置にいなかったので、そんなことになっているとは思わなかった。
「だがもしバレンタインのことを覚えていたとしても断ったぞ?雪華からのチョコ以外貰うつもりはないからな」
甘く瞳を細めて微笑まれると、みるみる顔が熱くなっていく。本番はこの後なのに、これくらいで負けてはいられない。
「食べていいか?」と言われたので「はい」と返事をした。
ドクドクドクドク――
心音が加速していく。
八年前のあの時よりも、今の方がずっと緊張している。若さゆえに突っ走れたあの頃と今の自分は違う。自分のことばかりを守ろうとしてしまうのは、年を取った分だけ傷つくのが怖いからだ。
「ありがとう」
柔らかな低音が降ってきたと思ったら、両手の先がふわりと軽くなった。ゆっくりと顔を上げると、小箱は彼の手の中に。
「そうか、今日はバレンタインだったな」
手の中の小箱をまじまじと見ながら「今気が付いた」と彼が呟く。
「他の人から貰わなかったんですか?」
思わず訊いてしまった。彼を狙っている女性たちには今日はまたとないチャンスの日だろう。きっと今日は一日色々な女性に捕まったのではないかと、内心ヤキモキしていたのだ。
「いや。……ああ、そういえば今日はやたら何かにつけて呼ばれるなとは思っていたが、絶対に定時で上がろうと思っていたから、必要最低限しかデスクから離れなかったんだ。仕事の用なら俺のデスクで聞けばいいだろう?」
「……」
「何人かはデスクの前で何かを出そうとしていたな…『仕事に関係ないものは不要だ』と言ったら、書類だけおいて去って行ったが」
私は今日はほとんど所定の位置にいなかったので、そんなことになっているとは思わなかった。
「だがもしバレンタインのことを覚えていたとしても断ったぞ?雪華からのチョコ以外貰うつもりはないからな」
甘く瞳を細めて微笑まれると、みるみる顔が熱くなっていく。本番はこの後なのに、これくらいで負けてはいられない。
「食べていいか?」と言われたので「はい」と返事をした。