マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
いつの間にかガウンの紐を解かれ下着だけになった私の体を、彼は大きな手でゆっくりと確かめるように撫でる。そして首筋やお腹に何度も口づけを落としていく。
羞恥のあまり両手で顔を隠すと、それに気付いた高柳さんに両手首を掴まれ外された。真っ赤になっているであろう顔を見られたくなくて、せめてもの抵抗に顔を横に向けると、目じりに溜まっていた涙がポロンとこぼれた。

「隠さないで、雪華。とても綺麗だ」

両頬を手で包まれ上を向かされると、(まなじり)に口づけられる。そしてそれから優しく唇を重ねられた。
さっきまでの喰らいつくような荒々しさが嘘のような穏やかな口づけ。
彼の唇が湿っていて少ししょっぱいのは、私の涙なのだと気付く。ゆっくりと唇を離した彼は、私をまっすぐ見つめながら言った。

「どんな雪華もすべて俺に見せて。お前の全部を大事にしたい」

私を見つめる瞳が濡れたように燿っている。

「貰ってもいいか?―――雪華の大事な初めてを」

欲情を内に秘めながらも真摯に向けられるその瞳に、私は黙って頷いた。

「――ありがとう。大事に、優しくする」

そう囁いた彼は、私に温かな口づけを降らせた。




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