マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
《二》
二
「面白かったです!結末、意外でした。最後のどんでん返し、そうくるのか~って!」
映画館を出ながら興奮した様子の雪華が話す。
「そうだな、あれには俺も驚いた」
こんなふうに映画を観終わった後、感想を言い合うのはいつぶりだろうか。ここ四年ほどはデートをするような相手はいなかった。
「この後どうしますか?」
腕時計を見るとすでに正午を過ぎている。
「昼どうしようか。腹具合は?」
「……あんまり空いていません」
さっき二人で映画を観ながらポップコーンを食べたせいだろう。
「少しこの辺のショップを見て回るか?途中で食べたい店が見つかったら、そこに入ってもいいしな」
「はい!」
俺の提案に嬉しそうに頷いた彼女の手を取り、自分の指で彼女の指の隙間を埋める。彼女の頬がまた色付く。
映画を観る前、同じように指を絡めて手を繋いだ時は驚いた様子の彼女だったが、二度目の今は彼女の方から俺の腕に体を寄せてくる。その控えめに甘えてくる仕草に、俺は今すぐここで彼女を抱きしめて、思いっきりその唇を味わいたい衝動をグッと堪えた。
こんな衝動的な欲望が自分の中に眠っていたことに驚く。過去に出会って別れた女性には、こんな衝動を持ったことはない――
否。一度だけあった。