マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
今夜は、本当なら雰囲気の良いレストランでディナーでも、と思っていた。
なぜなら、今日はちょうどバレンタインから一か月――
彼女の食べたいものを聞いてから店を決めようと思っていたが、彼女が口にしたのは思いも寄らないことだった。こんな時まで俺の予想を超えた言動をする彼女に、振り回されるけどそれも悪くない。
「やっぱり滉太さんのハンバーグが一番おいしい!」
一口目を飲み込んだ後、彼女は笑顔でそう言った。
「外はこんがり、中はジューシーで……。このクラフトビールともよく合いますね」
「ああ、そうだな。このクラフトビールは香りが良いけどキレもあって美味い」
「これ、私が飲んでみたいって言っていたやつですよね?」
「そうだったか?」
忘れたふりをしたけれど、雪華が言った通り、前に彼女が『飲んでみたい』と言っていた地ビールを、今日に合わせて取り寄せておいたのだ。
「ふふっ、……ありがとうございます」
目を細めて笑った彼女は、再びハンバーグを口に入れ「美味しい」と呟いている。
ダイニングテーブルの上には、メインとなるハンバーグの他にグリーンサラダ、オニオンスープ、そして枝豆ペペロンチーノが乗っている。雪華は枝豆ペペロンチーノを見た瞬間、「やった!」と飛び上がりそうな勢いで喜んでいた。最初に作ってやって以来、いたく気に入ったようだ。