マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
一瞬目を見張った彼女は、何か言いたげに口を開こうとしたけれど、それより早く俺が言葉を続ける。

「俺を煽るだけ煽っておいて、そのくせ放置する」

「煽って…放置……」

「そうだろ?付き合いだした途端にここから出ていって」

「それは……」

俯いた彼女の顎を掬い取って上を向かせると、少し困ったように眉を下げて伺うような瞳で見上げてくる。

「またそんな可愛い顔して。ほかの男の前でそんな顔見せるなよ」

「ほかのって……見せてませんし、可愛くもないです」

「……無自覚なのも善し悪しだな。雪華はほかの(やつ)を見るのは禁止だ。特に幾見は」

「なっ、だから幾見君とはもうっ」

彼女の口からその名前を聞くのが癪で、その唇を再び塞ぐ。

「ん、んんん~っ」

抗議の声が挙げられたが、聞こえないフリをした。

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