マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
***


絹のような髪を数回梳き、頭の頂にそっと口づけを落とす。腕の中の彼女から立ち上る、清廉な花のような香りを俺はゆっくりと吸い込んだ。


「雪華」

不意に呼ばれた彼女が顔を上げる。

「ホワイトデーはまだだ」

「え?」

「デートはあくまでもおまけだ」

「……おまけ?」

「ああ」

俺は頷くと、スッと立ち上がってハンガーにかけておいたコートから目的の物を取り出した。
雪華のところまで戻ると、ソファーに座る彼女の前に跪きそれを差し出す。彼女が目を見開いた。
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