マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
「それで?初恋の人との再会はどうだった?運命感じちゃった?」

「……まどかの意地悪。まだ怒ってるの?」

「こっちは焦りすぎて、うっかり生まれるかと思っちゃったんですけど?」

丸いローテーブルを挟んだ向こうから、眉を寄せてこちらをジロリと睨みつけてくるまどか。彼女の首元では、くるんと内に巻いた栗毛色の髪が揺れている。

怒ったふりをしてこちらを睨んでいるまどかは、そんな顔をしていても可愛らしい。
丸顔に丸く大きな瞳。アヒルのように両端の上がった唇。身長は百五十三センチと小柄で、ふんわりとした可愛いらしい彼女の雰囲気とマッチしている。
私とは真逆の容姿で可愛らしい彼女だが、その守ってあげたくなるような見かけとは裏腹に、とても面倒見の良い姐御タイプなのだ。
そんな彼女は現在二歳の男の子のママであり、出産を控えた妊婦さんでもある。

「すみませんでした……」

臨月を前にして『生まれるかと思った』と言われると謝るしかない。
シュンと肩を落とした私に、まどかがやれやれ、と吊り上っていた眉を戻した。

「でもゆっかちゃん!やっとゆっかちゃんにも春が来たのよ!」

「え、」

「初恋の人とお見合いで再会した上に同じ職場で働くなんて、オフィスラブ小説みたい!!」

まどかは、ぱっちりとした丸い瞳をキラキラと輝かせてどこかあらぬ方向を見ている。
どこか別の世界に行ってしまった親友は、「だいたいこの後の展開はピンチを助けてくれた彼と恋が再燃するのよね~」と一人呟いている。

「ちょっと、まどか…勝手に話を作らないで。高柳さんは私のことなんて欠片も覚えてないんだから。」

「そんなのゆっかちゃんが言えばいいじゃない。『サークルの後輩で、告白したのは私です』って」

「絶対いや。あれは私にとっては黒歴史なの。出来たらあの時のことはずっと忘れていて欲しいし、あの頃の私のことも思い出して欲しくない」

「えぇ~っ、あの頃のゆっかちゃんだってすごく可愛かったのに」

まどかは頬をふくらまして不満そうだ。
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