マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
あの頃の私のことを『可愛い』と言ってくれるのは彼女くらい。
おさげ黒縁芋ファッション。
あの恐ろしい告白と並んで、あの頃の自分は箱に詰めて埋めてしまいたいほどの黒歴史の一部なのだ。
「とにかく。高柳さんとは学生時代どころか、お見合いのこともなかったことにして、あくまで職場で初めて会った部下として、仕事上のお付き合いしかないから!」
「えーっ」
「『えーっ』じゃないの」
「もう、ゆっかちゃんったら……」
私の返答に、まどかは至極不満そうだ。
「とにかく私には仕事があればいいの」
「ゆっかちゃんはいつもそれなんだから。もう五年くらいずぅぅっと!」
「うっ、」
親友の指摘に言葉が詰まる。
目線を逸らして無言のまま、目の前に置かれたマロンパイにフォークを入れる。まどかが持ってきてくれた手土産だ。
ひとすくいして口に入れると、栗の甘みが広がった。とりあえず口に物が入っている間は答えなくていい。
「はぁ~~~」
そんな私を見て、まどかが深い溜息をつく。
「ゆっかちゃん、もう二十七なんだよ?誕生日が来たら二十八でしょ?いつまで仕事を恋人にしておくの?」
私の作戦は親友にはお見通し。
黙って口の中のものを咀嚼してコーヒーで流し込んでいる間に、まどかが更に畳み掛けてくる。
「頼りの佐知子さんだって海外に行っちゃうし。だから独り身のゆっかちゃんのことを心配して“お見合い”を仕込んだんでしょ?」
「分かってるわよ……」
「裕子ママだって、きっと心配してるよ……」
「うっ……」
それは私にとって、一番説得力のある言葉だった。
おさげ黒縁芋ファッション。
あの恐ろしい告白と並んで、あの頃の自分は箱に詰めて埋めてしまいたいほどの黒歴史の一部なのだ。
「とにかく。高柳さんとは学生時代どころか、お見合いのこともなかったことにして、あくまで職場で初めて会った部下として、仕事上のお付き合いしかないから!」
「えーっ」
「『えーっ』じゃないの」
「もう、ゆっかちゃんったら……」
私の返答に、まどかは至極不満そうだ。
「とにかく私には仕事があればいいの」
「ゆっかちゃんはいつもそれなんだから。もう五年くらいずぅぅっと!」
「うっ、」
親友の指摘に言葉が詰まる。
目線を逸らして無言のまま、目の前に置かれたマロンパイにフォークを入れる。まどかが持ってきてくれた手土産だ。
ひとすくいして口に入れると、栗の甘みが広がった。とりあえず口に物が入っている間は答えなくていい。
「はぁ~~~」
そんな私を見て、まどかが深い溜息をつく。
「ゆっかちゃん、もう二十七なんだよ?誕生日が来たら二十八でしょ?いつまで仕事を恋人にしておくの?」
私の作戦は親友にはお見通し。
黙って口の中のものを咀嚼してコーヒーで流し込んでいる間に、まどかが更に畳み掛けてくる。
「頼りの佐知子さんだって海外に行っちゃうし。だから独り身のゆっかちゃんのことを心配して“お見合い”を仕込んだんでしょ?」
「分かってるわよ……」
「裕子ママだって、きっと心配してるよ……」
「うっ……」
それは私にとって、一番説得力のある言葉だった。