マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~

私の“カミナリ恐怖症”は並大抵のものではない。
家にいる時ならすぐに遮光カーテンを引いて、雷光が見えないよう布団を被ってスマホで動画やドラマを観る。もちろんイヤホンは必須で、音量も最大だ。

だけど今日みたいに会社でカミナリに遭遇したときは、必死に平静を装いながら窓のない給湯室へ逃げ込む。給湯室は外壁から遠い場所にあるので、音も聞こえにくい。
給湯室以外にも、資料室やミーティングルームなど、何箇所か“避難場所”がある。

幸い外で移動途中にカミナリに遭ったことは無いのだけど、もしそうなったらきっと駅ビルやどこかカミナリの見えない場所に逃げ込むしかないだろう。

(い、今のうちに、給湯室に……)

閃光から音までに大分時間があったので、カミナリはまだ遠いのだろう。
震える足を何とか動かし、這うようにして机の下を進もうとしたその時

「誰か残っているか」

聞き覚えのあるバリトンボイスが入口の方から聞こえてきた。

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