マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~

《四》





うっすらと目を開けると、自分が何処かに寝かされているのが分かる。
見覚えがあるが自分の部屋ではないことは確かで、寝起きの頭にはどこだか瞬時に判断出来ない。
暗闇の中入口のドアの開いたところから、明かりが細く伸びている。意識が覚醒してくると、自分がどこにいるのかようやく理解出来てきた。

「……ここ、は…」

見覚えがあるはずだ。ここはオフィスの入口近くに有る応接室。私が横になっていたのは、来客用ソファーの上だ。

ゆっくりと体を起こすと、パサリと何かが足元に落ちる音がした。

(なんだろう)

拾い上げるとスーツの上着だった。

「これ…」

(もしかして私に掛けてあった?)

この上着の持ち主は誰なのか、手に持ったそれをじっと見つめながら、考えようとしていたその時

「目が覚めたのか?」

掛けられた声に振り向くと、ドアの所にその男性(ひと)は立っていた。

< 58 / 336 >

この作品をシェア

pagetop