マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
滑るように走る車。車の外は雨と風は強いが、深夜時間なので車は少なく道路は空いている。目の前で行ったり来たりするワイパーだけが、どこか忙しない。
短い遣り取りの後、沈黙した私たちを、窓ガラスを叩く雨垂れとラジオのアナウンサーの声だけが静かに流れていく。
―――なお、落雷の影響で一部地域が停電となっており、現在復旧の目処は立っていないとの――
(あの時のカミナリのことかな……)
近くに落ちるほどのカミナリを経験したのはこれで二回目だ。
(もし統括が来なかったら私今頃……)
冷たい床の上に何時間も横になっていた上に、帰宅することも儘ならなかったかもしれない。
高柳統括には余計な手間を掛けさせてしまったが、助けてもらって本当にありがたい。
(今度ちゃんとなにかお礼をしよう)
頭の中でアレコレと考えを巡らせていると、「おい」と横から声を掛けられた。