マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~

軽く胃袋が満たされ互いの缶がほぼ空になった頃を見計らって、私はここに来た時から気になっていたことを口にした。

「非難させて頂いて、本当に感謝しています。今夜一晩、このソファーをお借りしますね」

夜明けまでもう数時間しかない今、少しでも早く眠ったほうがお互いの為だ。早々と消灯を促すことにする。
これ以上高柳統括の睡眠時間を削ってしまうのが申し訳ないのもあるが、正直言って、これ以上深夜の密室に二人きりな今の状態に耐えられそうになかった。

「そのことだが、」

「割とどこでも寝れるタイプですので、お気遣い無用です」

今年は残暑が厳しい。十月になったというのにまだ日中は暑く夜もそんなに冷え込んだりしていない。地球温暖化はよろしくないが、今の私にはありがたい気候である。

「後片付けもやっておきますので、統括はもうおやすみになっ」

「統括じゃない」

「え、」

「今は仕事中ではない」

「あ……」

現状打開に気を取られて、うっかりさっき言われたことを忘れてしまっていた。

「それにさっきから、(ひと)の話も聞かずに勝手にアレコレ決めて……青水は仕事中はしっかりしているのに、プライベートでは相変わらず人の話を聞かないな」

「っ」
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