マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
目が合った。しっかりと。
思わず息をのんだ。
ぶつかった瞳は、奥二重でくっきりと大きく印象的。しっかりとした輪郭の小さな顔に、筋の通った高い鼻、厚すぎない唇。そのどれも驚くほどバランスが良く、十人中十人の女性がきっと“イケメン”だというだろう。
見上げるほどの高身長で九頭身なのは昔と変わらない。
けれど七年以上の歳月が彼に与えた大人の色香に、眩暈がするほどに圧倒的された。
「雪ちゃん?」
佐知子さんの声にハッとなった。
(い、いけない…)
今は自分も良い大人だ。小娘だったあの頃とは違うのだ。
きちんと挨拶をしなければ。そう思った矢先、先に口を開いたのは向こうの方だった。
「はじめまして。先ほどご紹介に預かりました、高柳滉太と申します」
(『はじめまして』………)
彼の挨拶に一瞬止まる。けれどすぐに微笑みを作った。
私もあの頃とは違う。色々な経験をして場数を踏んできた立派な“大人”なのだ。
「はじめまして。青水雪華と申します。どうぞよろしくお願い致します」
両手を前で揃えた模範的なお辞儀をした。