マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
仕事中は厳しく“鉄壁統括”を謳われた高柳さんだけど、ランチの雰囲気は悪くはなかった。
彼は主に聞き役に徹していて自分から積極的に話を振ることは無いが、幾見君が気負いなくアレコレと訊いてくるのに真面目に答えたり、大澤さんとも大人同士の他愛無い会話をしたりと、思ったよりも和やかなランチタイムを過ごすことが出来たと思う。
始終あちこちから飛んでくる視線が無ければ、もっと楽しめたかもしれないが。
そうしてあらかたランチが終わりそうな頃、高柳さんは『所用があるから』と先に席を立ち『お先に失礼するよ』と食堂を出ていった。
カツカレーを食べ終わり追加のデザートに口を付け始めた幾見君と、まだ三分の一ほど食事が残っていた私と大澤さんは、先に立ち上がった上司を『お疲れ様です』と見送った。