マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
「ただいま帰りました」
玄関を開け中に入りながら声を掛ける。
脱いだ靴を整えキッチンにつながる扉を開くと、そこには予想通りのエプロン姿があった。
「おかえり」
「……ただいま、です」
ぎこちなく返事を口にする。このやり取りは三回目。まだ慣れない。
「夕飯もう出来るから、着替えて手を洗って」
「はい」
キッチンから香る美味しそうな匂いにお腹が反応しそうになって、急いで自分の部屋へ滑り込んだ。
部屋着に着替え手を洗ってからリビングに戻ると、二人掛けのダイニングテーブルの上には湯気を立てた料理が並んでいる。
「何か出来ることありますか?」
「じゃあ冷蔵庫からビールを出して」
「はい」
冷蔵庫の扉を開くと、昨日まで無かったものが目に付いた。
「瓶ビール…」
「ああ、それを出してくれるか」
言われた通りにドアポケットからそれを出して、テーブルに持って行く。その私の後ろからエプロンを着けた高柳さんがやって来る。彼は手に持っていたご飯茶碗をテーブルに置くと、私の向かいに腰を下ろした。