マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
「あ、今日はご飯バージョンなんですね」

「ああ。タコと枝豆の混ぜご飯だ」

「良い香り……なんか洋風な匂いがします」

「ガーリックオイルが入っている」

「うわぁ、美味しそう」

目を輝かせる私に、高柳さんはテーブルの上の瓶を持ちあげこちらに向けた。

「あっ、すみません。私が」

「いい。ほら」

上司に先にビールを注がせるなんて申し訳ない気持ちになるが、促されるままグラスを持ち上げ注いで貰う。白い泡が立ち、グラスが琥珀色に染まる。

私も注ぎ返そうと瓶に手を伸ばしたが、彼はあっさりとそれを制して自分のグラスに注いでしまった。

「お疲れ」

「お疲れ様です」

グラスを持ちあげ軽く合わせると、お互いそれに口を付けた。
ごくごくごく、と一気に喉に流し込むと、しっかりとした喉越しの後、独特の香りが鼻に抜けた。

「美味しい…」

思わず口からこぼれた。

「やっぱり瓶は美味いな」

「そうですね。一人だと缶ばかり飲んでしまいますが、瓶の方が舌触りがマイルドな感じです」

「そうだな、缶よりも瓶の方が泡の状態も良い」

二人で飲んだビールの感想を言い合う。
一緒に暮らし始めて一週間、これが私たちの間に最初に出来た習慣だった。

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