マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~

『今日から三か月間、青水はここで暮らすことになったんだ』

一週間前、高柳さんはそう私に告げた。

『え?今なんて?』

『青水はここに住む。遠山本部長の奥様との話でそう決まった』

『ええっ!そ、そんなこと勝手に決められても」

『じゃあ停電の間どうする?他にあてはあるのか?』

『ホテルを探します』

『台風で足止めされたのは日本人ばかりではない。外国人旅行者も多く留まって、都内のビジネスホテルはパンク状態らしいぞ』

『っ、でも』

『それに万が一ホテルが見つかったとしても、それを知ったら遠山夫人はご実家からすぐに戻って来られるだろう。それどころか、フランス行きも取りやめにされそうな勢いだったが』

『………』

『こういう有事の際のことを、ご夫妻は一番気にされているんじゃないのか?』

高柳さんの言葉に反論できない。

確かに佐知子さんは私のことが心配で、すぐさま九州から飛んで着そうな勢いだった。もしホテル暮らしが知られたら確実に自宅に呼びよせる為に返ってくるだろうし、フランスに行った後日本に一人残る私のことを不安に思うのは想像に難くない。

『でも……』

だからと言って、再会した(であった)ばかりの上司の、しかも一人暮らしの男性の家に住むなんて出来るわけない。
今だってこうして二人きりの空間で向かい合っているだけで精一杯なのに。
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